植生モニタリング

現在、シラタマホシクサ群落を回復させるためのモニタリングを行っています。 その調査内容について簡単にご紹介します。

シラタマホシクサとは?

シラタマホシクサ(Eriocaulon nudicuspe)はホシクサ科の一年草で、東海地方のみに分布する植物です。
日当たりのよい湿地の環境を好み、秋に写真のような白い花を咲かせます。
この金平糖に似た花の形状からコンペイトウグサという別名で呼ばれることもあります。

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シラタマホシクサの花 2007年10月 Photographed by K.Nagata

近年、生育に適した湿地環境の消失が進んだ結果、絶滅が危惧されています。
以下のように全国および各県でレッドリストに記載されており、生育地の保全が求められています。

環境省レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU):絶滅の危険が増大している種
愛知県 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
岐阜県 絶滅危惧Ⅱ類
静岡県 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
三重県 絶滅危惧IB類:IA類ほどではないが、近い将来における絶滅の危険性が高い種

湿地環境の保全について

シラタマホシクサの生育適地である湿地は、里山の環境下で斜面崩れや湧水の発生に伴って自然に形成され、各地に点在していました。
しかし、近年の宅地開発や道路建設などで里山そのものが失われてきたことと、土砂災害防止のために砂防工事が行われ、新たな湿地が形成されにくくなった影響等で、里山の湿地環境は著しく減少しています。

一般的に、湿地は放置されると植生の移り変わり(植生遷移)が進行し、神社で見られるような森林に変化していくといわれています。
これが本来の自然な姿ではありますが、「湿地の環境」を保全していくためには植生遷移を遅らせる除草など適切な管理が必要となります。

今回、湿地環境を保全するための適切な手法を模索するために、区域を決めて試験的に除草等を行っています。

観察区の設定について

板山高根湿地を象徴するシラタマホシクサ群落を維持するために、以下のような作業を行い、継続観察をしています。

対象種:シラタマホシクサ(Eriocaulon nudicuspe)
目的:除草の強度および播種による植生変化をモニタリングし、今後の管理手法について検討する
開始:2007年12月~

作業区デザイン

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池の東側のヌマガヤ群落を試験地とした
横5m×縦2mの作業区を6つ設定(全体で10×6mの範囲)
各作業区に1ヶ所ずつ1m×1mの調査区を設定
上段から順に、無処理区(対照区)、弱処理区、強処理区とし、初期状態を記録した上で以下の作業を実施

  無処理区・・・作業を行わず、観察のみを実施
  弱処理区・・・冬季に地上部のみの除草を実施
  強処理区・・・冬季に地下部を含めた除草を実施、表土を除去

初春に作業区内全域に板山高根湿地内で採集したシラタマホシクサ種子を散布
継続して調査区内の植生変化をモニタリング

作業履歴
2007/12/01 作業区の設置、初期状態の観察、処理区内の除草
2007/12/15 強処理区の表土除去
2008/03/17 作業区全域にシラタマホシクサ種子を散布

※記載内容は適切な記述を心がけていますが、間違いがある場合はご指摘いただければ幸いです。


Last-modified: 2008-11-29 (土) 18:57:26 (5619d)